絵カードデータは豊富になったが、自閉症の視覚支援は進んでいない。

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自閉症の子供の生活支援には、スケジュールと視覚支援が有効です。

そのことは多くの人が知るようになりました。自閉症療育者では、もう常識です。自閉症の子どもを持つ家庭にも認識は広がりました。それ以外の一般の人は、まだ知らない人が多いですけどね。

スケジュールと視覚支援が良いことがわかっていても、それを行うことは簡単ではありません。

準備が簡単でないものの一つに、子どもに見せるためのイラストの問題があります。

イラストとは、例えば、「朝ごはん」「トイレ」「歯磨き」などのイラストです。イラスト10点ぐらいで、スケジュールと視覚支援を始めます。でもすぐに、イラストは20点30点、100点と必要になってきます。何年も自閉症の子どもと暮らしていると、イラスト1000点になることもあります。

2000年代前半には、イラスト500点ぐらいの商品もあったようです。2000年代後半になると、イラストデータの新商品はほとんど出なくなりました。インターネットが発達したんですね。Google検索で、画像も検索できるようになりました。イラストセットを買わなくても、画像検索一発で、イラストが見つかるようになったのです。

そんなインターネットの普及で、2010年前後にはご家庭で絵カードを作ることが簡単になってきたのです。

自閉症や知的障害の子供のために、無料で使えるイラストを作るプロジェクトも幾つかありました。一番有名なのは、長野県の特別支援学校の青木先生が代表をしているドロップレットプロジェクトでしょう。そのプロジェクトが配布しているイラスト(彼らはシンボルと呼んでいる)は、現在では1,700点の規模です。

2010年代後半の現在、家庭内での視覚支援は5年前より後退しているように感じます。もしかしたら、特別支援学校でも視覚支援が後退しているかもしれません。

絵カードデータは容易に手に入るのに、絵カードによる視覚支援が後退しているのです。

イラストデータよりも別の課題の方が深刻になってきたのです。

まず、無料の絵カードデータが簡単に手に入るので、有料の絵カード商品が衰退しました。絵カードを買うから、絵カードを自作するに流行が流れたのです。

絵カードの自作はこうです。
1)イラストデータを入手する
2)Wordかエクセルで、印刷形式に割り付ける。
3)手元で印刷する
4)ハサミで絵カードに大きさに切る
5)絵カードをラミネート・パウチで補強する。
6)ラミネート後にもう一度、ハサミで大きさに切る
7)絵カードの裏にマジックテープをはる

一般家庭の環境は、2010年頃と2015年代後半ではガラッと違ってきました。そうです、スマホの全盛です。

家庭にパソコンは必要なくなりました。起動に5分もかかるWindows VISTAパソコンが埃をかぶっているでしょう。プリンターも必要なくなりました。年賀状はネットで注文して宛名も書いてくれます。スマホの画面はとても綺麗です。どこかのサイトを印刷する必要もありません。そんな生活をしていると、Wordで画像を貼り付けて印刷することは、もう特殊技能です。

イラストデータを無料で手に入れても、絵カード作りが全く進まないのです。

私の運営している「ザ・プロンプト」というサイトでも、イラストデータを無料で公開しています。このイラストデータは、お金をかけて作成しました。このイラストデータは、私の会社の製品である「コバリテ視覚支援スタートキット」のために製作しました。

私が、そのコバリテ・イラストをネットで公開した理由は、コバリテ製品の認知を広めるためです。世の中にイラストデータは溢れています。コバリテ・イラストを無料公開しても、コバリテ製品が売れなくなるという心配はしていませんでした。

コバリテ製品を発売した2016年当時は、これまで絵カードを自作していた家庭が、コバリテを購入してくれました。2017年になると、自宅で絵カードが作れない人がコバリテ製品を買うようになりました。

最近のお母さんはスマホは持っているけど、自宅にパソコンもプリンターもないのです。

そこで私は、印刷形式になったデータを公開することにしました。

絵カードセンター」で印刷形式になった絵カードを公開することにしました。

パソコンが使えなくても、スマホに文字入れされた絵カードの画像を保存できます。自宅にプリンターがなくても、町のカメラ屋さんかコンビニに行けば、写真L版プリントできます。絵カードに丁度いい大きさにレイアウトしているので、写真プリントをハサミで切ると絵カードとして使えます。

公開されていても、それを入手した人が利用できなければ意味がありません。イラストデータそのものは、ご家庭や自閉症の子供を支援する人にとっては、利用価値がなくなっています。そんなデータがネット上に溢れています。

私は、コバリテのイラストデータを公開するのを止めます。

私は、自閉症の子供の視覚支援を広めるために、イラストデータを公開することを止めます。その代わりに、写真プリント絵カード(印刷形式になったデータ)を公開していきます。

自閉症のご家庭に子どもの好きな絵カードが溢れることを願っています。

 

子どもの成長と家族のゆとりのために!

古林 紀哉

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