さるくの長瀬さん（本名：坂上慎一さん）の懲役３年の実刑判決が確定したようですので、私の感想を書いておきます。
私は、「様々なことを考慮しても、今回と同じ行為をすれば実刑です。支援に関わる方々は、早く他の方法や体制を整えてください。」が司法からのメッセージだと感じました。
事件を複雑にしている背景
報道等では、同じ論調に読み取れますが、彼の行為は２つあります。
- 主に自閉症の方がなりやすい強度行動障害の改善という行為。
- 軽度の発達障害を伴う少年に見られる違法行為の改善という行為。（いわゆる法触少年の更生）
彼は、強度行動障害の支援の専門家です。彼は行為の記録としてどちらも動画を撮影していました。私は彼のセミナーで、強度行動障害の改善の動画を見たことがあります。一部の専門家は、違法行為の改善の記録動画を警察（または検察）から見せられて、意見を述べたと聞いています。私は違法行為の改善の動画は見ていません。
おそらく彼は、前者にも後者にも同じ手法を使ったのだと思います。その手法は「暴露反応妨害消去法」と呼ばれます。前者と後者では、反応妨害をする具体的手立てが異なります。
前者の強度行動障害の改善では、（器具は使わず）彼の体を使った身体拘束で、子どもの行動を妨害します。報道等の情報によると、後者の違法行為の改善では、恐怖を少年に植え付けることで少年の行動を妨害します。
警察は、前者の動画も後者の動画も押収しています。罪に問われたのは、後者の違法行為の改善の行為のみでした。
そして事件の発覚後、いろんな人がSNSで発信したり、様々な団体が声明を出したりしました。発信した人も声明を出した団体も、強度行動障害に関わる方々です。強度行動障害の改善に関わる彼の行為は、立件されていません。一方で罪に問われた、法触少年の更生ついては、関連する方々の発言を私が目にすることはありませんでした。
ただし、強度行動障害の改善で行なった行為に対しては、法に触れないかもしれないが、容認されるものではないと言われています。
「逮捕・監禁罪」という罪状
逮捕・監禁罪は「一定時間以上直接的に身体の拘束した場合」または「一定の場所からの脱出を困難にした場合」に成立する犯罪です（刑法220条）。
法定刑は、3月以上7年以下の懲役です。
また、逮捕・監禁の結果とし傷害または死亡の結果が生じた場合には、逮捕・監禁致死傷罪に該当します（刑法221条）。法定刑は、逮捕等致傷の場合は3月以上15年以下の懲役、逮捕等致死の場合は3年以上の有期懲役です。
今回問われた罪は、逮捕・監禁罪のみでした。したがって、彼の行為によって少年が怪我をしたことは無かっと、推測できます。
懲役４年の求刑
私は法律の専門家ではないし、裁判を傍聴したわけでもないし、裁判記録を読んでもいません。知っている情報は報道等のみからです。
私の推測です。
求刑を重くする要素
- 行った行為は、逮捕・監禁そのものであった。
- 繰り返し行われていた。
- 立件された事件は複数
求刑を軽くする要素
- 彼の行為には一定の効果があった。（まるっきりの詐欺ではない）
- 保護者の同意と依頼の下での行為であった。
- 他に改善する方法や体制が整っていなかった。（手を打たなければ家庭は崩壊）
焦点は実刑か執行猶予か？
2022年12月27日、検察は懲役４年を求刑しました。
よく世間では、求刑の８掛の判決が出やすいと言われています。また、懲役３年以下ならば執行猶予付きの判決が可能ですが、懲役３年を超えると必ず実刑です。
もしも検察が実刑相当と思ったならば、懲役５年を求刑していたでしょう。もし執行猶予相当と思ったならば、懲役３年を求刑していたでしょう。
懲役４年の求刑はものすごく微妙です。判決は実刑も執行猶予付きもどちらもあり得ます。
私は、検察は実刑・執行猶予付きの判断を裁判官に委ねたのだと感じました。
懲役３年の実刑判決
2023年1月20日、懲役３年の実刑判決が出ました。
量刑を重くする証拠も軽くする証拠もあったと思います。採用されなかった証拠もあったと思います。
司法の下した判断は、実刑でした。
司法には法の秩序を維持する役割があります。事件の背景を改善することは、司法の直接の役割ではありません。
報道等による判決文の概要では、「極悪非道の被告人」というイメージです。実刑は免れないと。判決文には入ってないと思いますが、私は司法からのメッセージとして「支援に関わる方々は、早く他の方法や体制を整えてください。」という思いを感じました。
そして、2023年2月3日の控訴期限までに、検察も被告人も控訴せず。懲役３年が確定したと聞いています。
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